友情結婚~恋愛0日夫婦の始め方~
「芹沢と連絡とってんだろ?」
大崎が尋ねる。
「まあな。もっちゃんともとってるよ」
のぞみは特別じゃない、そういうニュアンスを込めて言った。
「芹沢かあ。あいつも結婚の予定なしかな」
「そうだろうね」
琢磨は、これだけあっさりと嘘をつける大人になっていることに、自分で衝撃を受ける。
おそらく表情も何一つ変わってないだろう。
「桐岡は芹沢のこと、相変わらず対象外?」
「……なんだよ、突然」
そう言うと、大崎がニヤッと笑いながらこちらを見た。
ビールを一口。
「お前たち、不思議な感じだったもんなあ。明らかに特別感出してんのに、色恋沙汰にならないんだ」
「特別、だったかな?」
琢磨は首をかしげる。
「もっちゃんと芹沢、同じポジションだったか?」
そう聞かれると、確かに何かが違う。
そうか。
高校時代の記憶を思い起こすと、最初に浮かぶのは必ず、芹沢の大きな笑顔。
「どうかな」
胸が小さく鳴りだすのを、琢磨は無視した。
「別に一緒だよ。あいつは、男の友達と変わらなかった」
琢磨がそう言うと、大崎がまた前方に目をやる。
今のぞみは、もっちゃんと嬉しそうに何かを話していた。