友情結婚~恋愛0日夫婦の始め方~
第4節
広島から帰ってきて五日目。
金曜日の朝。
のぞみはキッチンでおにぎりを作っていた。
うまく三角には握れないから、大きな丸になってる。
琢磨は不安定のようだ。
ある日にはいつも通りだけれど、ある日には黙って不機嫌。
まるでジェットコースターのように、琢磨の機嫌に振り回される毎日。
寝室の扉が開く音がしたので、のぞみはなるべく明るい声を出した。
「おはよう! 今日も走らなかったんだね」
「ああ、ちょっと」
琢磨の声は落ち気味。
どうやら今日も不機嫌らしい。
のぞみは小さく息を吐いて、それから「ごはんたべるー?」と大声を出した。
「いらねーかな」
ネクタイを締めながら、琢磨がキッチンに入ってきた。
冷蔵庫からミネラルウォーターを出して飲む。
それからのぞみの大きなおにぎりに目を留めた。
「これ、なに?」
「おにぎりだけど?」
琢磨がぷっと吹き出した。
「なんでそんなにでかいんだよ」
「3個握るの面倒だから、1個にしたの。これわたしのお弁当。琢磨もいる?」
「いらねえよ、そんなバレーボールみたいなやつ。だいたいカバンに入らないし」
「そう? おいしいのに」
琢磨の様子に、少しホッとする。
もしかしたらいつも通りに戻ったかも。