友情結婚~恋愛0日夫婦の始め方~
のぞみは、キッチンを出る琢磨の背中に「ねえ、最近朝ごはん食べてないけど、大丈夫?」と声をかけた。
「……平気だよ?」
こちらを向かない。
なんだろうこの違和感。
琢磨がよくわからない。
「琢磨」
おにぎり片手に、のぞみは呼んだ。
「なに?」
琢磨はリビングでのぞみに背を向け立っている。
「なんか、わたししたかな?」
琢磨が振り向いた。
水を飲もうと、口元にボトルが触れている。
「してないよ」
「でもさ、広島からおかしいじゃん」
のぞみが一歩進むと、琢磨が一歩下がる。
その距離の取り方に、のぞみの胸がずきっと痛んだ。
琢磨はじっとのぞみを見ると、一口水を飲みボトルをテーブルに置く。
「広島からおかしいんじゃない。ずっとおかしかったって、気がついた」
そう言った。
のぞみはその言葉に激しく殴られる。
琢磨はソファに置いてあったジャケットを手に取り、羽織った。
背後から見る琢磨の横顔は、怒っているわけでもなく、悲しんでいるわけでもない。
あの顔は、不安?
「行ってくる」
琢磨はカバンをとって、玄関へ消えていく。
しばらくしてバタンというドアの閉まる音。
のぞみは力なくおにぎりをテーブルに置いた。
髪をかきあげて、ぼんやりと窓の外を眺める。
『ずっとおかしかった』
それっていつから?
あのキスから?
それとも結婚したとき?
まさか、高校生のときから、ずっと?