永く青い季節 〜十年愛〜
再び走り始めた彼につられて走り出した私の鼻先に、冷たい粒が落ちて来て、それは徐々に数を増して行く。
「あ〜降って来ちゃった〜」
私は持っていた傘を空に向けて開いた。
その時、すぐ後ろで甲高い急ブレーキ音が聞こえ、振り向く間もなく真横を自転車が通り過ぎた。
自転車に乗った男性の肩と、私の腕が接触し、弾みで手から離れた傘が、風に煽られ車道へ飛んだ。
自転車の男性は、ただ少し接触しただけだと思い、「あ、すみません」と声をかけ通り過ぎて行った。
その直後、走る車の前方に舞い落ちた傘は、ガードレールとの間に挟まれ、後続車に踏まれて無残に砕けた。