永く青い季節 〜十年愛〜
⑥
「持ち込み機材あったから、俺、車なんだ。一緒に乗ってく?」
「あれ?お酒飲んでなかったの?」
「うん。ノンアルでごまかしてた。ま、どっちにしてもたいして強くはないんだけどね」
「そうなのね?じゃ、お言葉に甘えちゃおうかな」
山口さんに勝手に気を遣われ二人にされて、昔を思い出して笑ってはみたものの、あの頃とは状況が違う。
恋人が居る彼と、こんな遅い時間から店を変えて飲み直す…という訳にもいかないし、どうしたものか…と考えていた。
少しホッとしながらそう答えると、彼と一緒に地下駐車場までのスロープを歩く。