永く青い季節 〜十年愛〜
私はこの上ないほど無理をして無理をして、精一杯の笑顔を作り、彼にお礼を言うと車のドアに手を掛けた。
彼から目を逸した途端、鼻の奥がツーンとして、瞼の奥から熱いものが押し寄せて来るのがわかった。
ダメ!…涙、止まって!
あと10秒だけでいいから…。
一生懸命そう念じたのに、噛み締めた奥歯の隙間から声にならない声が漏れ、固く力を入れていた肩が震えてしまった。
「…美織?…」
「じゃあね!」
気力でそれだけ言って、ドアを開けようとした私の右腕を、彼が素早く掴んだ。