永く青い季節 〜十年愛〜
彼は何か言葉を探しているようだったが、沈黙が堪らなくて、私はすぐに口を開いた。
「そんなこと聞いて、どうするの?」
口を衝いて出た私の声も、
その温度感も、
自分で驚くくらい冷たかった。
「…わからない。でも…」
彼は呟くようにそう言ったきり、黙り込んでしまった。
他に何も言葉が見つからず、暫く俯いていた彼と私だったが、まるで示し合わせたかのように同時に顔を上げ、視線が絡んだ。
目の奥が、憂いで揺れているように見えた。
自分の感情を映す鏡を見ているようで、それが彼のものなのか、自分のものなのか、わからないままに見つめ合っていた。