永く青い季節 〜十年愛〜
⑧
どちらが先に手を伸ばしたのか、わからない。
まるで磁石が引き合うように唇が触れ合っていた。
彼の背後で、ドアがバタンと閉まる。
彼の片手は私の首筋から後頭部を、もう一方の手は背中を強く引き寄せていて、
私は少し背伸びをして、彼の首に両手を絡めていた。
長いキスの後、彼の胸と腕に包まれる。
私は目をきつく閉じ、優しく、温かく、懐かしいその胸にただ身を委ねていた。
「幸…」
思わず名前を呼んだその声に、彼はハッとしたように身体を離した。
「ごめん」
謝らないで…
私は今、もっと酷いことを貴方に言おうとしているのに。