永く青い季節 〜十年愛〜
荒波に巻き込まれ息もできなかった私達は、嵐が去った後の凪いだ海の上を二人で漂う…。
彼を自分の身体に閉じ込めているような、刹那的な幸福感。
しかし、それは長くは続かず、解かれて、また『一人』と『一人』に戻る。
その瞬間、とてつもない淋しさが押し寄せ、私は彼の首に腕を回し、離れるのを拒んだ。
彼は少し困ったように笑うと、胸の中に私を収めるように優しい腕で抱きしめてくれた。
そう…見慣れた筈の、彼のこの笑顔も…
私の為に見せてくれることは、もうなくなってしまうのだから…
しっかりと覚えておこう…。