永く青い季節 〜十年愛〜
帰って行く彼を見送れるだけの強い気持ちが持てず、私はブランケットにくるまったまま目を閉じて、彼の声と足音を聴いていた。
ほんの数時間前、二人を現実から隔離してくれたそのドアが、今度は、彼と私の世界を遮断するかのように、冷たい音を立てて閉まった。
そして彼は、戻るべき場所に帰って行く。
その愛しい足音は、ドアの向こうに遠ざかって行き、やがて聴こえなくなった。
彼の体温が私の肌から消えて、
シーツの上の僅かな温もりも、徐々に消え失せて行く。
もうすぐ春になるというのに、寒くてたまらない。
冷たくなったベッドの上で、私は猫のように身体を丸めた。