永く青い季節 〜十年愛〜
⑥
卒業式の日、
もう会えなくなってしまう彼に、ほんの一言だけでいいから言いたかった。
彼は東京の大学に進学することになり、この街から離れて行くのだ。
「卒業おめでとうございます。元気で頑張って下さいね」
ありきたりな一言。
そして許されるなら、もう一言だけ…
「今でも藤元先輩が好きです」
と…。
けれど、やはり私は遠くから見つめているだけだった。
女の子達に取り囲まれ、ボタンやら写真をせがまれている彼のことを。
例の女子マネージャーもその中にいた。
もしかしたら、大人しくてつまらない私が嫌になり、彼女とヨリが戻ったのかも…。
…そんな事を考えた。
ふとその波が途切れた時、一瞬だけ目が合った…気がした。
思わず、動き出しそうになる足。
勇気を出せ、想いを伝える日はもう今日しかないんだから…と。