永く青い季節 〜十年愛〜
しかしその直後、吹き抜ける風に視界を奪われた。
…春一番…
ギュッと目を閉じると、校庭の木々の葉たちがザーッと音を立てたのが聴こえた。
春風に、目と耳を塞がれ、ほんの数秒、私の中だけ時間が止まった。
恐る恐る瞼を開けると、泣かないつもりだったのに、涙が零れた。
砂埃のせい?
瞬きをして、彼のいた方を見ると、バスケット部の仲間に肩を組まれ歩いて行く彼の姿が、だんだん遠ざかって行くのが見えた。
そうして、私の不器用で幼かった恋は、終わった。
明日からは、片想いでも見ていることさえできなくなる…
もう二度と会えなくなるのかも知れない。
そんな現実が、どんなに悲しいことなのか、まだ幼い私には、よく理解できていなかった。