永く青い季節 〜十年愛〜



いきなり隣の椅子が勢いよく引かれ、驚く間もなく大声で話し掛けられた。

「わ〜美織!久し振り!元気だったぁ?何か髪型変わって綺麗になったね」



高校の頃、ポニーテールにしていた長い髪を、卒業してから肩の辺りまで切って、緩いウェーブをかけた。
薄いメイクもするようになった。

そういう梨絵は、昔から美人だったが、少し会わない間に随分大人っぽく、一段と磨きがかかったように見えた。


「やだ、梨絵が私を誉めるなんてキモチワルイ。久し振りったってニヶ月くらいだよ」

「冷たいなぁ。大学入学してお互いバタバタしてて、美織に会えなくて淋しかったんだも〜ん」

「何言ってんの。彼氏できてラブラブしてんでしょ?」

「バレたか」

こういう時にペロっと舌を出しておどける梨絵は、屈託がなく何だかとても愛らしい。

「でも美織に会いたかったのは、本当だも〜ん」

「はいはぃ、ありがとう」

< 30 / 145 >

この作品をシェア

pagetop