永く青い季節 〜十年愛〜
「幸!ナイスシュート!」
ベンチから掛けられる親しげな透明感のある声。
ギャラリーは一斉に、その女子マネージャーを見る。
そう…私達ギャラリーが、コートから離れた場所でそこから立ち入れないのに対し、マネージャーは格段に彼の近くで、彼に声を掛け、世話を焼き、笑顔を貰うことができる。
その構図が、そのまま彼と彼女、そして私達との関係を表しているように思えた。
部のエースと、アイドル的存在の女子マネジャーのカップル。
よくある話だ。
勝手な想像かも知れないが、周りの空気で感じた。
二人の間には他の人が立ち入れない何かがあるのかも知れない、と…。
その日、その試合が終わり、彼が体育館を出て行くまで、私は彼の姿を目で追っていた。
槙野美織(マキノ ミオリ)15歳、
彼に初めて出逢ったこの日を、私は今でも鮮明に覚えている。