永く青い季節 〜十年愛〜
何度か寄り道をした公園の近くに最近できたらしい店で夕食を終え、注文した覚えのないケーキセットが目の前に運ばれた時、彼がリボンのついた小さく細長い箱を差し出した。
「美織、誕生日おめでとう!」
「えっ?!」
驚いて、多分文字通りの“目が点”状態になっている私に、彼は穏やかな表情でこう言った。
「俺にはキリストよりも、美織の誕生日の方が大事だからさ…。
会って渡せて良かった」
突然のサプライズに、そして彼の言葉に感激しながら、ラッピングを解いて箱を開けてみる。
細い銀色のチェーンに、小さな三日月のような形のトップがついていて、そこに小さな輝きを放つ粒たちが埋め込まれたネックレス。
高校生の頃からお互いの誕生日は知っていたが、あの頃はわざわざ会ってデートなどできなかったから、誕生日もメールを送り合っただけだった。
正直、期待が全くなかったと言ったら嘘になるが、朝から会っていて今まで何も言わなかったので、忘れているものだと思っていた。
帰り際に教えたら、彼はきっと落ち込むんだろうな…
そう思ったけど、一日一緒にいられた事が、私には最高のプレゼントだったと言うつもりでいたのだ。