永く青い季節 〜十年愛〜
⑨
『青天の霹靂』
という言葉は、こういう時に使うのだろう…
と、あの時、私は混乱する頭の中で考えていた…。
病院をあとにして、少し道に迷いながらもやっと彼の部屋に辿り着き、鍵をガチャリとキーホールに差し込む。
帰り際、彼に部屋の鍵を手渡された。
何だか彼には不似合いな可愛らしいキーホルダーがついているのを見て、私は思わず吹き出した。
「何これ。意外に可愛いのつけてるのね?」
「あ、それ…美織のだから」
一瞬、意味が分からず彼の顔を見る。
「合鍵。貰っといて。
これから美織がこっち来る時、俺が練習やバイト中でも待ってられるだろ?」
「何それ。勝手に来て、ご飯作って掃除もしといて…的な?」
「いやいや、そんなつもりは…」
照れ隠しに言ってみただけなのに、真に受けた彼は少し困った顔をした。
「冗談よ。すっごく嬉しい!」