永く青い季節 〜十年愛〜
彼に頼まれた物をバッグに詰め、病院へと向かう。
今日も暑い日になりそうだ。
地下鉄の中は冷えていたけど、駅を出て歩き出すと、いきなりの外気との気温差に急に体温が上昇したような気になる。
そして病院の入口を通るとまた暑さが和らぐ。
エアコンの効いた病院内は確かに快適だけれど、早く怪我が治り退院して、自然に季節感を感じさせてあげたいな…と廊下を歩きながら思った。
「失礼しまーす」
四人部屋の入口で控えめな声で挨拶をして、窓際の彼のベッドへと向かう。
そして昨日の夜、彼の腕に包まれ花火を見た病室のカーテンを開けた。
昨日と同じような笑顔を見せて…。
彼もまた、昨日と同じ優しい笑顔を見せて迎えてくれるんだと思っていた…