永く青い季節 〜十年愛〜
何よりも、私は彼の腕の中でただ甘やかされていただけで、彼女のように、彼が辛い時に支えてあげられる存在になれなかったことに、たまらなく愕然としていたのだった。
そんな漠然とした理由に、彼が納得する筈もなかったけれど…。
「自分の為に何かをしてくれるとかそういう事は関係ない。
ただ美織の存在が、俺には必要なんだ」
彼はそう言ってくれたのに、私はその手を離して、一人で勝手に幕を降ろしてしまったのだった……。
大学生になり少しは大人になったつもりだったけど、私はまだ、ただの我が儘な包容力のない子供だったのだ。