永く青い季節 〜十年愛〜
③
あれから五年の間に、二つの恋をした。
『人間は忘却の生き物』だと言う。
それは寂しいことのようでもあるが、忘れなければ前に進めないことだってある。
空虚の波を漂っていた私を救ってくれたのは、とても優しい人だった。
同じ大学の同級生で、彼とのこともわかった上で、それでも私を優しく包み込んでくれた。
一緒にいると、私の心の中の棘が一本一本抜けて行くようだった。
その人が必要だと思った時、東京の病院で会った彼女のことを思った。
きっと彼にとって、彼女も、同じように心地良く癒される場所だったんだろうと…。