永く青い季節 〜十年愛〜
「久し振り…」
「うん…」
五年の歳月が流れた…という事実が、お互いの風貌でわかる。
彼は社会人らしくスーツを着こなし、すっかり大人の男性になっていたし、私もそれなりの大人の女に見えていただろう。
あれから、二人にとって別々の長い時間が流れて、そして今に至っている。
例え心の中にずっと引っ掛かっていたとしても、現実的にはもうあの頃のことは想い出にしか過ぎなくて…。
だから、少しの胸の痛みは感じても、今なら優しい気持ちで昔話でもできそうな気がした。
久し振りに会った友人がそうするように近況を伝え合い、関連会社にいたのに会わなかった間の仕事の話、共通の友人の話を少しして、話が途切れた。
「あ、じゃあ点検入りますね」
そして僅か数秒のぎこちない空気を払拭するように彼は仕事に入って行った。