永く青い季節 〜十年愛〜
「千春、元気?会社辞めちゃってから会ってなくて」
「あ、はぃ…」
「あ、あのね、藤元くんの彼女、私の同期なの。北支店にいたんだけど、知らない?高野千春」
私に掛けられた西田さんの明るい声が、穏やかだった私の心をざわめかせた。
「あ、いえ…」
一瞬表情を強張らせた私を彼はチラッと見たが、西田さんは気付かず話を続けていた。
「あ、もう点検終わったのね?引き留めてごめんね。千春にまた会おうねって伝えといて。じゃ、お疲れ様〜!」
「あ、はい。それでは失礼します」
西田さんの言葉に、私も会釈と挨拶をし、そして彼は帰って行った。