君が言っていることは何もあってません

砂漠のトリフネ

「最近砂嵐の夢を見るんだ」
バンドメンバーにプチデモンはボヤいた。
あれから随分同じ夢を見るようになり、堪らずボヤいたのだ。
初めて砂嵐の夢を見るようになってから３ヶ月は過ぎた頃だろうか。

「疲れてンじゃないの？」
バンドの中でプチデモンより唯一歳上で、ギター担当のアレックスが言った。
「砂嵐ってめちゃくちゃ痛いよね」
ドラム担当のロルダンがぶっきらぼうにドラムを叩く練習をしながら言った。
「夢占いする？」
最近加入したギターのリパティンが心配気に言った。
「砂嵐の中で宇宙船がドーンって出て来てわって！起きるんだよね」
辛そうにプチデモンは言った。
「宇宙船！」
先程の３名は声を揃えた。
「前々回のアルバムコンセプトが宇宙だね」
ベース担当のフランが静かに言った。
「次のラジオで話そうかな？」
「夢占いの辞書持ってきますよ」
プチデモンとリパティンはラジオ番組を持っていた。
「詞を書いたから曲書いてみてよ」
プチデモンが夢を見た後に書いた詩を皆に見せた。
「めちゃくちゃいいっ。でも合わない！」
アレックスが背伸びをしながら言った。
「ロルダンの曲にあいそうな詩だね」
フランが呟いた。
「よろしくお願いします！」
楽屋のドアをノックして、テレビ局の番組制作スタッフがドアを開けずに言った。

「は～い」
リパティンが良く通る声で返事をした。
今日は新しいアルバムのプレゼンで演奏をする。
これだけの有名番組に出演できれば、嫌でも売れる筈なのだ。
< 4 / 5 >
表紙・目次

この作品をシェア

pagetop