元帥閣下は勲章よりも男装花嫁を所望する
貴族出身の偉そうなやつらとは少し違うと思っていたけど、レオンハルト様にそんな過去があったなんて。
少年時代の彼の苦労を思うと、胸が苦しくなった。
アルバトゥスとエカベトが戦争なんてしていなければ、お父様が亡くなることもなかった。だから元帥という地位にありながら、戦争を憎むような発言をしていたのか。
しかもお父様の仇討ちのためではなく、お母様を養うために軍人になっただなんて。
戦争を嫌っているのに、才能があったせいで元帥にまで昇りつめ、戦場で勝利を重ねた。それは誰かの父親を、誰かの子供を、何万人と海の底に葬ってきたということ。
その胸の内は、どれだけ複雑で激しい波が渦を巻いていたことだろう。
「あいつは望んで今の地位に上り詰めたわけじゃない。だから一度退役を宣言したあいつがすぐ戻ってきて、驚いたんだよ。皇帝陛下直々に説得でもされたかね」
腕組みをし、また我らが元帥閣下を見上げるライナーさん。
彼が戦い続けることを了承した理由、それは……。
どくんと胸が不吉な音を立てる。
私のせいだ。私を花嫁にするため、彼は戦場へ舞い戻ることになったんだ。
あのタイミングで出陣を拒否すれば、父上は彼に娘を差し出すことはしなかっただろう。