元帥閣下は勲章よりも男装花嫁を所望する

「見えてきましたな」

今回はベルツ参謀が近くにいる。以前より作戦が複雑になるためだろう。

参謀の低い声で、緊張が高まる。じっと目をこらすと、すでに戦闘を始めている敵艦隊と味方艦隊が米粒くらいの大きさに見えた。

「うん、善戦しているな。作戦通り行けそうだ。アドルフに今のままの速度で進めと指示しろ」

レオンハルト様に言われて、船尾の操舵輪を握っているアドルフさんに合図を送った。

ヴェルナー艦隊の合流を待つ味方艦隊のために全力で駆けつけるかと思いきや、レオンハルト様はゆっくりと艦隊を前進させることを指示した。

私たちが向かう右前方には味方艦隊、左前方に敵艦隊。

「いいぞ、うまいこと後退している」

望遠鏡で戦況を見ながらにっと口角を挙げるレオンハルト様。この人、戦争は嫌いだけど、負けず嫌いなんだろうな。

やっと肉眼でも黒塗りにされた敵艦隊と味方艦隊の攻撃の応酬が見えてきた。

船の傍でぱっと火花が咲いたと思うと、ドオンという爆音が空に響いた。煙が雲のように船にまとわりつきつつ、風に流されていく。

一見、味方艦隊が押されているように見える。味方艦隊は紡錘状に艦隊を配置し、ちょうど真ん中に他の艦に守られるようにして旗艦が浮かんでいた。

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