元帥閣下は勲章よりも男装花嫁を所望する
味方艦隊は少し攻撃しては後退し、攻撃しては後退しを繰り返す。その間艦隊は無秩序に横に広がったりはせず、紡錘陣形を守り抜いている。
敵は逃げる味方を追い、陣形を崩しはじめた。逃げる速度が速い味方を追うためだろう。
「よし、そろそろだな。速度を上げろ!」
ベルツ参謀が無言でうなずく。それを見て再びアドルフさんに合図を送った。
ヴェルナー艦隊は傘の形をした陣で、黒い悪龍のように伸びた敵艦隊の列の脇腹へと突っ込んでいく。
敵艦隊が気づき、こちらにも船首を向け始める。
「砲撃用意!」
レオンハルト様の声が響くと、ライナーさんが主砲に手をかける。兵士がレオンハルト様の空に上げられた右手に注目していた。
「撃て!」
敵艦隊が射程距離内に入ると同時、ライナーさんが操る主砲が火を噴いた。
それを合図にしたように、他の艦もライナーさんが狙った方向を集中的に砲撃する。
敵艦隊の何隻かが火を噴き、折れ曲がり、海へ飲まれていく。悪龍の腹がちぎれた。
味方艦隊を攻撃する敵艦の数はこれで激減した。分断された敵は味方艦隊を向いていいのかヴェルナー艦隊を向けばいいのか、混乱しているようだ。