元帥閣下は勲章よりも男装花嫁を所望する
「おい元帥閣下、次の指示は!」
ライナーさんから怒鳴るような大声が飛ぶ。
まばたきをして前を見れば敵艦はほとんど戦闘不能の状態であり、まだ無事な兵士がいるであろう船は降伏の白旗を挙げていた。
船尾の方へ走る。背後にいる敵も、味方艦隊が制圧しつつあった。これで戦闘が終わった。そう思ったとき。
「あ、やばい」
操舵輪から右手を放し、左方を見て呟くライナーさん。不吉な予感がして彼がいるところまで階段で上がると、左方から、そして右方からもエカベト艦隊の黒い船が迫ってきているのが見えた。
「レオンハルト様! みんな、左右から新たな敵が近づいてきてる! 注意して!」
叫びながら全速力で船首に戻る。そこではすでに事態を把握した顔で、レオンハルト様が腕を組んでいた。その眉間にはわずかな皺が。
「ああ……!」
援軍が来たことに気づいたのだろう。正面にいる敵艦隊の残党が白旗を捨て、後退して陣形を組みなおしはじめている。
「まったく、素直に降伏すればいいものを」
レオンハルト様が大きく舌打ちをした。
このままだと、味方艦隊全体が敵艦隊に包囲されてしまう。レオンハルト様は次の作戦を即決した。