元帥閣下は勲章よりも男装花嫁を所望する
それでも突っ込むというのは無謀に思える。けれど命令を受けた兵士たちに動揺の色は見られなかった。
こうして私の意見は完全無視され、味方艦隊と合体して陣形を整えるなり、艦隊は速度を上げて正面にいる敵の群れに突っ込んだ。
そこからの戦闘はますますすさまじいものとなった。
海上に無数の火花が咲き乱れ、着弾の煙で視界が白く染まった。硝煙と血のにおいが鼻を突き、攻撃を受けた艦体は大きく揺さぶられる。
それでも正面の敵を撃破すると、すぐに右側へ方向を変える。左からくる敵が追い付かないうちに、そちらの艦隊と砲弾を交えることになった。
一か所に集中砲火を浴びせ、敵陣形を崩壊させる。それを組みなおそうと方向転換する隙にさらなる砲弾を撃ち込み、こちらも白旗を上げさせることに成功した。
と思えば、背後から最後の敵艦隊が迫ってきている。
ゆっくりと一八〇度方向転換していたら、こちらに隙が生じてしまう。ヴェルナー艦隊は陣形を広げ、ぐるりと大きく右に旋回した。
そうして敵の背後に回り込もうとしたけれど、敵の動きもなかなか早い。いつの間にか敵の頭がこちらの船尾を、こちらの船首が敵の尻尾を狙って円を描くようにして激しい戦火の応酬が開始された。