元帥閣下は勲章よりも男装花嫁を所望する
──最初に敵と衝突してから八時間後。
「終わった……」
静かになった海面に残った敵艦たちに白旗が掲げられていた。
ヴェルナー艦隊は約三割を失ったように見える。そのほとんどは、合体した味方艦隊のようだ。ヴェルナー艦隊の指揮についていけず陣形を崩した船が集中砲火を受けたのだ。
「あーきつかった。どうすんだよレオンハルト。これだけの船の敵、全部捕虜にするのか?」
ライナーさんが火薬の燃えカスで真っ黒になった頬を手の甲で拭いながら言う。
「思ったより残らなかったな」
レオンハルト様がぽつりとこぼす。援軍合わせて何百とあったように見えた敵艦も、白旗を上げられる状態で残ったのは三十隻ほどだった。
それぞれの艦隊の巨大な旗艦はあるものは沈没し、あるものは敗北を覚悟して自爆した。それに続いて自爆する船が相次いだ。
「あ、味方だ。今頃遅いよね」
のんびりとこちらに歩いてきたアドルフさんが、右斜め後方を指さす。そこには帝国の旗を掲げた味方艦隊が。
「まあいい。あいつらに捕虜の処理は全て任せよう。決して理由なく暴行をしないよう、釘を刺しておいてくれ。俺は疲れた。寝る」
そう言い、レオンハルト様は深いため息をついた。