元帥閣下は勲章よりも男装花嫁を所望する
レオンハルト様が身を乗り出す。
温泉かぁ。本で読んだことはあるけど、本国にはないから実際に入ったことはない。
ライナーさん辺りが知れば大喜びしそう。お酒を持ち込んで、砲撃手を集めて宴会とか……。
けど温泉って野外だものね。ちょっと私にはリスクが高すぎるかな。全方位から誰かに見られていないか気にしなきゃいけないし。
またも諦めていると、レオンハルト様がとんでもないことを。
「今から入ればいいだろ。俺が見張っててやるから。灯りをつけなければそうそう見つからないし」
「ええっ」
たしかにこんな夜中の温泉、誰も近寄ってこないだろうけど……。
「いえ、でも。元帥閣下ともあろうお方に、私ごときの入浴の警備などさせられません」
「……こんなことは言いたくないんだけどな、ルカ。ちょっと臭うんだよ」
「ふお!」
遠慮したら、レオンハルト様がひどいことを。
「体拭きをしてもな、やっぱりたまには湯船に浸からないと。なぁクリストフ」
「はい、入浴で清潔を保ち、体を温めることは健康に繋がります」
話を振られ、すかさず同意するクリストフ。ホントかよ。まあ貸し切りなら感染の危険も少ない……のかな?