元帥閣下は勲章よりも男装花嫁を所望する
レオンハルト様が木陰に姿を隠したのを確認し、服を脱ぐ。衣擦れの音が静かな空間にやけに大きく響き、緊張を高まらせた。
男の人の前で自ら服を脱ぐなんて。姉上が見たら卒倒することだろう。
裸になると、寒い夜の風が肌を刺す。肩甲骨まである亜麻色の髪を高い位置でくくり、つま先からゆっくりとお湯の中に入っていった。
「わあ……」
お湯の温かさが体の緊張をほぐしていくのがわかる。
久しぶりのお風呂だ。しかも、満天の星々の下でこんな貸切風呂に入れるなんて、贅沢極まりない。
「とってもいいお湯ですよ、レオンハルト様。明日時間があればぜひ……」
そう言いながら後ろを振り返ってギョッとした。言葉を失った私の前に、裸のレオンハルト様が何も隠そうとせずに堂々と立っていたから。
「きゃああっ」
目を覆い、顔を背ける。どどど、どうして見張りのはずのレオンハルト様が裸に!?
混乱する私の横でざぶんという音と共にお湯が大きく揺れた。
「うむ、確かに良い湯だ」
そっと声のした方を指の間から覗き見る。するとやっぱり、レオンハルト様が真横で温泉に浸かってリラックスしていた。
「見張りしてくれるって言ったのに! ウソつきじゃないですかっ」