元帥閣下は勲章よりも男装花嫁を所望する
結局緊張して身を固くしていると、レオンハルト様が笑った。
「カッチカチじゃないか。仕方がない、俺がほぐしてやるか」
「えっ?」
「すぐに慣れ切ってしまう女よりは可愛いな」
言うが早いか、レオンハルト様の左手が動いた。まずいと本能が察知するも、抵抗する前に後頭部に手を回され、彼の上半身が水面に波を立てる。
「んっ」
濡れた唇が押し付けられる。それは簡単に私の唇を開き、中に侵入を果たした。
「いやっ、無理……」
いくらなんでも野外では……。誰かが来るかもしれない。
こんなところを見られたら色んな意味で終わりだ。そんな危機感が余計に心拍数を増加させる。
抵抗しようと思うのに、カチカチだった体から力が抜けていく。
「誰も来ないさ」
「そんなの、わからな……っ」
お湯の中で彼の大きな腕が胸を這う。今までと違う感覚に、全身が震えた。
「よく軍人は戦いの最中に死にたいとか言うけど、俺は嫌だね。どうせなら好きな女と抱き合って死にたい」
「勝手に、ひとりで、死んでくださいっ」
「ははっ。そう言うなよ。俺はお前と一緒がいい」
身勝手な元帥閣下は、お湯の中で私を翻弄した。抜糸が済んだ後だからか、その動きは遠慮のないもので、巨大な魚が跳ねて戻っていくかのような音を何度も辺りに響かせた。