元帥閣下は勲章よりも男装花嫁を所望する
元帥閣下、上陸する

……最初から温泉に一緒に入るつもりだったんだ。そうに違いない。

結局温泉でのぼせてしまった私は、レオンハルト様に背負われて宿屋に帰ってきたらしい。

翌日も引き続く頭痛で臥せっていたけど、昼過ぎになって体調が回復してきたのでベッドから起きて軍服を纏う。

髪は縛って軍用帽の中に入れ、宿泊している部屋から出たときだった。

「わあ。アドルフさん」

ドアを開けたらアドルフさんが驚いた顔をしていた。私の姿を認めると、赤毛の操舵長はにこりと笑う。

「ちょうどルカを呼びに来たんだ」

「私を? 何かあったんですか?」

胸の中を暗い影がよぎる。いつまでもこののんびりした島で休憩できるはずはないとわかっている。アルバトゥスとエカベトの間に何か動きがあったんだろう。

頷いて案内された広間に向かうと、そこにはこの前激怒してここを去ったメイヤー提督と、他に何人も偉そうな見た目の男が七人も集まっていた。

彼らの階級章を見ると、みんな上級大将や大将、中将みたい。

食事用の大きな長方形のテーブルの上座にいたのは、レオンハルト様。しっかりと軍服を着こんでいる。同じように七人の上級士官たちがテーブルを囲む。下座にベルツ参謀とライナーさんがいた。

< 128 / 210 >

この作品をシェア

pagetop