元帥閣下は勲章よりも男装花嫁を所望する
皆の前でそれを開き、朗読しだすファネール提督。
「この度の勝利、誠に見事であった」
それは敵艦隊の主力を壊滅せしめた、先日の戦闘に対する賛辞で始まった。
「アルバトゥス帝国皇帝、ハンヒェン四世の名において命ずる。
レオンハルト・ヴェルナー以下七名の提督率いる艦隊で、エカベト本土を攻撃すべし」
続いて七名の提督の名前が読み上げられる。当然、今集まっている提督たちの名だ。
「抵抗するようであれば、いかなる犠牲を払ってでもエカベト国王の首を取れ。
降伏するようであればそれもよし。生きたまま国王を帝都に連れて帰ること。
戦略、兵士の配置、攻略後のエカベトを占領する人事等、詳細はヴェルナー元帥に一任する。
以上」
ファネール提督がくるくると巻物を巻き取ると、重い沈黙が広間の中を満たした。
とうとう皇帝陛下の勅命が下った。こうなればレオンハルト様も出陣せざるを得ない。
「つまるところ、俺に丸投げってことか。それでいて勝つ気満々だ」
一歩間違えば不敬罪に問われそうな口調で、レオンハルト様が苦笑混じりに吐き捨てた。
「もうひとつ書状をお預りしております。降伏に応じるようなら、エカベト国王に渡すようにと」