元帥閣下は勲章よりも男装花嫁を所望する

書状についてのコメントはせず、いきなりレオンハルト様を褒めだす国王。もう老人と言っていい歳の彼の髪はほとんど白くなっており、口には立派なヒゲが蓄えられていた。

「そなたのようなものが、我が軍におれば……」

悔しそうというよりは残念そうに、国王は皺だらけの顔を歪めた。

「運が良かっただけでございます、陛下」

「それだけではあるまい。どうだヴェルナー元帥。余の麾下に入らぬか」

レオンハルト様の眉がピクリと動いた。エカベト国王の目は、可愛い孫を見るようにレオンハルト様を見つめている。

「ありがたきお言葉ですが……私は、この戦いを最後に軍を退役したいと思っております。私は戦いに倦んでしまったのです。陛下のお役には立てそうにありません」

再度頭を下げたレオンハルト様を、国王は意外そうに見つめる。

「なんと。そなたほどの人材が退役と。早すぎるではないか。退役して、何をするつもりだ?」

素朴な疑問に、レオンハルト様は苦笑して答えた。

「私にもわかりません。花嫁を迎え、学問でもしながらのんびりと余生を送るつもりです」

「そなたなら一国の王とも皇帝ともなれようものを。もったいない」

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