元帥閣下は勲章よりも男装花嫁を所望する

そう言いながら、父上の顔色が変わっていく。その顔には健康的でない汗が滲んでいた。同じものが私の手のひらに溜まっていく。

「まさかルカ、お前……」

そのまさかだ。父上は私が一年前、女装してレオンハルト様と出会っていたことが……つまり私が女だということがバレたのだと悟ったのだろう。

「元帥閣下、大事なお話があります。明日の夜早速お時間をいただきたい」

今日はこれから、提督たちは皇帝陛下との面会がある。話をするなら明日の方がいい。

「……私を強請る気か」

父上の顔が強張る。それとは対照的に穏やかな顔をしているレオンハルト様は、首を横に振った。

「お父様、ここで立ち話も何ですし、ヴェルナー元帥閣下はお忙しいでしょう。明日の夕食にお招きしたらいかがかしら」

姉上が優雅に微笑む。父上は周りに無数の他人の目があることを思い出したように、ゆっくりとうなずいた。

「では、明日の夜うかがいます」

「ああ」

「失礼いたします」
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