元帥閣下は勲章よりも男装花嫁を所望する
レオンハルト様は戦争の報告をしに、他の提督たちと皇帝陛下の待つ宮殿へ赴かねばならない。
ちなみにエカベトにはファネール提督とその艦隊が残っている。エカベト国王はモンテルカストからメイヤー提督の船に乗せられて別の港に着き、目立たないように宮殿に護送されているはずだった。
エカベト国王は立派な人物だった。メイヤー提督の船に乗るときも堂々としていて、狼狽したような表情はひとつも見せなかった。
「あの……」
不安そうな顔をしてしまったのか、レオンハルト様は優しく微笑み、私の頭に手を置く。
「また明日。今夜はゆっくり休めよ」
皇帝陛下に面会できるのは提督たちだけらしく、同行は許されない。私は姉上と父上に挟まれたまま、レオンハルト様の広い背中を見送る。
「ヴェルナー元帥! ヴェルナー元帥!」
レオンハルト様が歩くたび、その両脇に人だかりができた。途端に彼が遠い存在に感じられ、寂寥感がつのった。