元帥閣下は勲章よりも男装花嫁を所望する
家に帰ると途端に力が抜けて、姉上と父上と話す間もなく、ベッドに潜り込んで爆睡してしまった。
朝起きて時計を見ると、もう八時。膨大な事務処理が残っているのに!
慌てて軍服を着て家を出る。
「ルカ、今日は七時にヴェルナー提督を御招待していますからね。早く帰ってきなさい」
出がけに姉上が玄関まで出てきて念を押す。私はそれに『了解』と短く返事をし、馬車に乗った。
仕事中はレオンハルト様に会うことはなかった。元帥は事務処理とは別の仕事があるらしい。
というわけで、結局夕方事務所を出るまで、レオンハルト様とは接触のないまま。
「どうしよう……」
部屋に帰って時計を見ると、もう六時。あと一時間でレオンハルト様がこの家にやってくる。
料理は姉上が担当してくれると聞いたけど、じゃあ私はどうすればいいのか。
まず、何を着ていればいいんだろう。自分の家なのに軍服は変だし、かと言っていきなりドレスで登場したのでは、父上に張り倒されかねない。
恋人を家に招くなんて初めてのことで、戸惑いしかない。
結局、私は男性用の私服……シャツにベスト、ズボンにブーツを履き、長い髪はひとつに束ねたままという色気も何もない格好で部屋から出た。