元帥閣下は勲章よりも男装花嫁を所望する
「姉上、何か手伝うことがあれば……」
いつもお客様を招く広間に行くと、姉上と何人かのメイドがこちらを見た。
「ルカ様!」
「ルカ様、お帰りなさいませ!」
「あ、ああ皆元気だった?」
昨日会うことができなかったメイドたちは、私の方へ駆け寄ってくる。年下のメイドたちは私を憧れのまなざしで見ているみたいだけど、それは私が男だと思っているからだろう。
「みんな、あとは私とばあやだけで大丈夫よ。下がりなさい」
姉上にそう言われると、メイドたちは『また戦争のお話を聞かせてくださいね』と口々に言いながら広間から出ていった。
広間の大きなテーブルの上には既に食器がセッティングされており、姉上が育てた庭のバラが中央に鎮座している。
「ねえ、ルカなんなのその格好。どうして私が用意しておいたドレスを着ないの?」
「え? 用意?」
私を責めているような表情の姉上が言っていることがわからず、首を傾げる。
「お父様ね。私、あなたの部屋にドレスを置いておいたの。だけどお父様が隠したんだわ、きっと」
腰に手を当て、断定するような調子で憤慨する姉上。
「というか、私の部屋に勝手に入るのはやめてほしいな」
「すみませんルカ様。エルザ様もご主人さまも、私が止める言葉なんぞ聞いてもくれず……」