元帥閣下は勲章よりも男装花嫁を所望する
音頭につられ、全員グラスを掲げる。それを見計らっていたのであろう給仕係たちが一斉に料理を運んでくる。
使用人がいる間は、レオンハルト様も礼儀正しい客人として振舞うしかないよね。
父上はひたすら自分から戦争の話をレオンハルト様に求めた。彼は鷹揚に父上の質問に答え、母上や姉上が退屈しないよう、冗談を交えて戦争体験を話す。
私はちらりと姉上とレオンハルト様を見る。姉上はレオンハルト様に興味津々といった表情で、うなずきながら話を聞いていた。
ヘイゼルの瞳が今まで見たことのない色を反射して輝くのを、私は焦りにも似た気持ちで見つめていた。
もし、姉上がレオンハルト様を気に入ってしまったら。レオンハルト様も、私よりよっぽど女らしくて優雅な姉上を気に入ったら。
そこまで想像したら身震いがした。
そうなる可能性がないわけではないけど、それ以上想像するのは不快以外の何物でもなかった。
レオンハルト様に他の女性を近づけたくないなんて。自分の中にそんなドロドロした感情があることに、生まれて初めて気が付いた。これが、嫉妬というものか……。
料理が終わり、コーヒーが運ばれてきたところでようやく戦争の話が途切れた。その瞬間を逃さず、姉上が口を開く。