元帥閣下は勲章よりも男装花嫁を所望する
「何を言う。ルカは私の息子だ」
「いいえ、彼女はあなたの娘さんだ。私は彼女の体をこの目で見ました」
その発言に全員が息を飲み、私を見つめた。
「あ、あの、怪我をして意識を失い、手当てをするときに……」
慌てて状況説明をするけれど、遅かった。父上は顔を真っ赤にして立ち上がり、平手でテーブルを叩いた。置かれていたカップたちが数ミリ宙に浮いた。
「バカ者!!」
どうしてそんな過失を犯したんだと、視線で責めてくる父上。身を縮める母上と姉上を刺激しないよう、レオンハルト様は落ち着いた声音で言う。
「彼女を叱らないでください。彼女は、身を挺して私の命を敵の銃弾から救ってくれたのです。そのために、女性の体に傷を負わせてしまった。知らなかったとはいえ、本当にすまないことをしました」
レオンハルト様は立ち上がり、父上より高い長身を折り曲げ、ハッキリと言った。
「お願いします、元帥閣下。私に責任を取らせてください」
「責任だと……」
「どうか、ルカ嬢を私にください。彼女を花嫁として迎え入れたいのです」
レオンハルト様が言い終わると、姉上が頬を紅潮させて興奮させ、輝いた瞳で私と彼を交互に見つめた。けれど父上は言葉を失い、うなるばかり。