元帥閣下は勲章よりも男装花嫁を所望する
クリストフは私が女だということを知っている。私とレオンハルト様の仲も。
この手紙の内容を漏らしたところで支障はないように思える。けれど私はレオンハルト様の文章に従い、その手紙をすぐに懐にしまった。
「何が書いてあったんです?」
「うん……色々とね」
悪意のなさそうな顔で聞いてくるクリストフ。レオンハルト様との結婚を父上に反対されたことを話せば相談に乗ってくれそう。だけどそれも言わない方が良さそう。
「ヴェルナー艦隊のみんなが不審がってますよ。あなたが突然いなくなったから。元帥閣下と仲違いしたんじゃないかとか、色んな憶測を呼んでいます」
紅茶を飲み終えたクリストフが、静かにカップをソーサーに戻す。
「みんなに言っておいて。父にむりやり後方勤務に戻されたんだと。うちの父は過保護すぎるからね。決してレオンハルト様を憎んで離れたわけじゃない」
「そのようですね。手紙を受け取った瞬間から、まるで恋する乙女のような目をしていますから」
からかう彼の言葉に苦笑で返す。
ヴェルナー艦隊のみんなにはお世話になったのに、挨拶する間もなくお別れになってしまった。
幹部のみんなに全部ぶっちゃけて相談に乗ってもらいたい気分になるけど、それもレオンハルト様の手紙の文章が制止する。
ああ、みんなに会いたいなあ。一緒にいるときは騒がしくて早く離れたかったけど、今となってはそれも懐かしい。