元帥閣下は勲章よりも男装花嫁を所望する
手紙で指定されていたレオンハルト様の邸宅についたのは、基地を出てから一時間後だった。目立たないように少し離れたところで馬車を降り、こそこそと物陰に隠れながら歩いてきたからだ。
「……久しぶりの逢瀬だというのに、色気のないやつだな」
玄関まで出迎えてくれたレオンハルト様は、再会したときと同じようなシャツとズボンで現れた。今日は父上がいないせいか、ジャケットは羽織っていない。
使用人が誰も出てこないところを見ると、すでに人払いが済んでいるみたい。
「だって、着替えている暇なんて……」
私だって、真っ黒な軍服で会いたかったわけじゃない。けど、誰にも知られてはいけない以上、これで来るしか方法がなかったんだもの。
「からかっただけだ。むしろ、ドレスより軍服のほうが好きだね」
「どうしてですか」
「期待感が高まるからさ。うるわしき中身とのギャップがたまらな……」
「もういいです!」
久しぶりに会ったのに、そんなことしか話すことがないの?
そっぽをむいて頬を膨らませると、ふわりと背後から包み込まれるように抱きしめられた。
「会いたかった」
耳元で囁く甘い声が鼓膜を震わせる。そっと体を反転させられると、優しいキスが降ってきた。