元帥閣下は勲章よりも男装花嫁を所望する
「いったい外で何が起きているのか教えてください、参謀」
私が尋ねると、ベルツ参謀はこくりとうなずいた。私たちよりかなり年上のはずなのに、廊下を走っても息切れひとつしていない。
「ヴェルナー元帥閣下が逮捕されたと知り、市民たちが暴動を起こしたのです」
「なんだって?」
私より先に、レオンハルト様が反応した。
廊下の角を曲がってだだっ広い玄関ホールに出ると、わっと待ち構えていた兵士の群れが襲ってくる。
「市民たちは権利を独占する門閥貴族たちと皇室によっぽど鬱憤を溜めていたらしいな」
ライナーさんがバズーカを構えると、兵士たちは恐れおののき、壁にはりつく。膠着状態になったホールに奇妙な沈黙が落ちる。
「その市民たちを煽って武器を与えたのは、私たちですがね」
「なんということを。俺は平和的解決を望んでいたのに」
ベルツ参謀まで両手にピストルを構えると、レオンハルト様は額を押さえた。
「ヴェルナー元帥を解放しろ!」
「腐った貴族社会は終わりだ! ヴェルナー元帥こそ国家主席に!」
玄関から漏れ聞こえる市民の声。それは私たちを囲む兵士たちの武器を押さえこんでいるようにも思えた。