元帥閣下は勲章よりも男装花嫁を所望する
「さすが陸軍だな」
「射撃の成績は良かったんです」
私たちは四人で二百人ほどの兵士を相手にせねばならず、善戦しながらもどんどん階上に追い込まれていく。
「こっちだ」
ライナーさんが背後にやたら大きな装飾過剰の扉を見つけ、それを開いた。
私たちはひとまずそこに逃げ込み、大きな家具を移動してバリケードを築く。少しでも時間を稼ぎ、ここから脱出しなければ。
「ここは……皇帝陛下のお部屋だったのかな」
毛足の長い絨毯が敷き詰められた広々とした部屋には、装飾過剰なシャンデリアや美術品が。天蓋つきの大人三人ほどが一緒に眠れそうな大きなベッドに、掃除が大変そうなガラス窓が。巨大なそれは一部が扉になっていて、外に出られるみたいだ。
その外から、割れんばかりの市民の声が聞こえる。
「……レオンハルト様……」
重厚なドアが外から押され、唸り声を上げている。それを背後に、レオンハルト様はゆっくりと窓際に歩み寄った。
ベルツ参謀が扉の取っ手に手をかけ、ゆっくりとそれを開ける。
レオンハルト様に続いて外に出ると、そこは豪華なバルコニーになっていた。見下ろすと、宮殿の前の広場いっぱいに市民が詰めかけていた。