元帥閣下は勲章よりも男装花嫁を所望する
あっさりと自分がしたことを認めるクリストフ。まさか、弱気に見えた彼が皇帝陛下を殺害するなんて……。
背中を冷たいものが駆け抜けていく。
ヴェルナー艦隊の一員に裏切られるなんて、考えたこともなかった。
「皇帝陛下が抵抗する暇もなく即座に注射器を扱い、致死量の薬を入れることができるのは医者くらいだもんな。そして、ルカが女性だということを知っていて、それをうまく利用しようとしたんだろう」
「ちょっと待て。こいつ、マジで女なのか?」
緊迫した空気の中、ライナーさんの素っ頓狂な声が響く。
彼は私が女性でありながら軍に所属したという罪状は聞いていたけど、信じていなかったみたい。
「ごめんなさい……みんなをだましていて」
しょんぼりと事実を認めてうなだれると、ベルツ参謀が私の肩を叩いた。
「性別なんて関係ない。きみがヴェルナー艦隊のために懸命に働き、元帥閣下の命を救ったことは誰もが認めている」
「そ、そうそう。ビックリしただけ」
まだ驚きから解放されないようなライナーさんも、ベルツ参謀に同調してうなずいてくれた。
性別なんて関係ない。その言葉が胸を温める前に、レオンハルト様が話を元に戻す。