元帥閣下は勲章よりも男装花嫁を所望する
「どうしてお前がそんなことをしたか、ここにいる面々に説明してくれないか」
ライナーさんとベルツ参謀が視線をクリストフに戻した。クリストフはピストルをレオンハルト様に向けたまま、口を開く。
「あなたが英雄気取りだからですよ、元帥閣下」
「ほう」
「何万ものエカベト国民を犠牲にしたあなたを憎んでいます。私はエカベト出身ですから」
レオンハルト様以外が息を飲む音が聞こえた。
「最初から刺客として俺の船に乗っていたわけだな」
クリストフがエカベトの刺客……。信じられない暴露の連続で、ライナーさんが口を開けたままフリーズしてしまう。
「ルカに近づこうとしたのは?」
「どう見たって女性でしたから。骨格も肉づきも歩くときの重心も髪質も。弱みを握って利用してやろうと思ったんです」
えっ、そんな。後ろから抱きつかれたあのときには、もう私が女だと気づいていたっていうの?
レオンハルト様は感心したようにうなった。
「なるほど、俺も気づいていなかった頃から見抜いていたわけだ。大した観察眼だ。医者志望だったというのは嘘じゃないみたいだな」
「船に乗った時はあなたに隙がなさすぎて途方に暮れていましたが、彼女のおかげで一気にあなたに近づくことができました。感謝しています」