元帥閣下は勲章よりも男装花嫁を所望する
「わざわざおいでくださり、ありがとうございます閣下」
まだ二十代後半の彼は、歓迎の微笑を浮かべて父に手を差し出して握手を交わした。
髪は黒く、襟足はスッキリと短く切られている。黒すぎず健康的な肌に、アンバーの瞳がきらめく。
すらりと伸びた長い四肢。そして端正なその顔は、およそ軍人らしくない。
纏っているのは軍服ではなく、ただのコットンシャツとジャケットだった。それも父上が来るから仕方なく羽織ったといった風情。
やっぱり。一年前に会ったあの人だ。久しぶりに間近で見るヴェルナー大将の姿に、不覚にも胸がときめく。
彼はレオンハルト・ヴェルナー。若干二十八歳で海軍元帥の座に就いている。