元帥閣下は勲章よりも男装花嫁を所望する
戦いを終えて帰還したら、彼と姉上が結婚する。そうなると自然に、私は彼の義弟になるわけだ。
「前から、名前でいいと言っているはずだ」
「わわわわかりました、レオンハルト様」
とにかく放してもらうため、私は彼の要求に従った。
「それなら良し。ではついてこい。幹部と顔合わせをしなくては」
どうせなら、もう少し前に顔合わせしておきたかった。けれど幹部もレオンハルト様も忙しく、その時間が取れなかった。
手を放したレオンハルト様は、私の数歩先を歩いていく。
黄金色の刺繍やボタンで飾られた紺色の軍服の長い裾をなびかせる姿は、初対面の日のことを思い出させた。
やっぱり彼は、私服より軍服が似合う。
私は肩を抱かれて高鳴っていた胸を腹式呼吸で整えながら、レオンハルト様の後をついていった。
まだ着慣れない私の軍服は、元帥のものとほとんど一緒。紺色の膝丈ジャケットの腰部分にベルトを巻き、下には白いズボン。ジャケットの下には白いスカーフを巻いている。髪はいつもと同じように、束ねて帽子の中にしまった。
レオンハルト様との違いは、胸や肩に飾られた階級章と、ボタンや刺繍の数。元帥以下の軍服は実用性が重視されているのか、装飾は限りなく少ない。