元帥閣下は勲章よりも男装花嫁を所望する
初めて見る戦艦の中をキョロキョロ観察しながらレオンハルト様の後ろをついていくと、最後に船尾楼に案内された。
会議室を兼ねているというそこには、すでに何人かの先客がいた。レオンハルト様が姿を現すと、その人たちはそろって敬礼する。当たり前だけど、全員男性だ。
「紹介しよう。先の戦いで殉職した副官の後任。ルカ・クローゼ少佐だ」
レオンハルト様に背中を押され、男性たちの前に出る。
「よろしくお願いいたします」
ぺこりと頭を下げると、明るいブラウンの髪をした五十代と見える紳士が苦々しい顔でこちらを見つめる。
「……まだ子供じゃありませんか。陸軍から来たと聞きましたが、本当に提督の補佐役が務まるんでしょうな」
そう言われたら、何も言い返せない。本物の男に比べて若く見えるのは確かだし、いきなり海軍元帥の補佐役が務まるかなんて、私が一番疑問に、そして不安に思っている。
「まあまあ、いいじゃないですかベルツ参謀長。今さら陸に下ろすわけにもいかないし。クローゼ元帥の秘書として長く後方勤務を勤めていたそうだし、何とかなるでしょう」
オレンジ色の長いくせ毛を首の後ろでくくった若い男性が、笑顔で参謀長の肩を叩いた。