元帥閣下は勲章よりも男装花嫁を所望する
「それにしても、まさか新しい副官がこんな美青年だとは。おいルカ、恋人との別れはきちんと済ませてきたか?」
ライナーさんがまるで友達に話しかけるような気軽さで話しかけてくる。
「恋人なんていませんよ」
「ウソだろ。モテそうなのに」
たしかに、私のことを男と思っている娘さんからラブレターをもらったことは一度や二度じゃないけど。どれも屋敷に勝手に投函されていた。
けれどもちろん、どのお嬢さんの好意にも、応えることはできない。
「ライナーは済ませてきたんだろうな」
レオンハルト様がライナーさんに悪戯っぽい視線を投げかける。
「おう、俺と別れたくないって女はたくさんいてな。昨夜だけで七人と最後の夜を過ごして寝不足よ」
済ませてきたって……そっちかい。女の敵だな。でも、あっけらかんとしていてどこか憎めないから不思議。
「恋人はいなくとも、人生に悔いのないようにやることはやってきたんだろ、ルカ」
どうしても仲間が欲しいのか、しつこくからかってくるライナーさん。
「ライナー、いくらルカが可愛いからって、あまりからかっちゃいけないよ。困ってるじゃないか」
アドルフさんが長い前髪を揺らし、前に出る。助け舟が来た。そう思ったけれど。